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    「やつぱり徳さんが多いね」

    「――さうだな」

    「あのう、笹井へ往診がございますが」

    一方、正文はこの大人と子供と混まざり合つたやうな、身体だけは大振りな、女にかけては強したゝかな息子を前にして途方に暮れた。彼はあれほど自分の思ひ通りに仕立てようとしたにかゝはらず、思ひもよらぬ息子として現れた練吉に対し、今遅蒔おそまきながらその心底に立つて理解してやらうと試みていた。だが、何といふ支離支滅な、性懲しようこりもないふしだらだつたらう、どういふ風に彼の云ひ分に耳を傾け、どんな風に彼を認めてやればいゝのだらう――そこには何一つ彼の型にはまつた見方にあてはまるものはなかつた。ぐらぐらした、手に負へない、いたづらに父親である彼の胸を暗くし、息をつかせない思ひをさせる、愚かな、口の達者な、だが何となく見捨て切れないもののある、それは彼自身の息子にちがひないが、あれほど入念に手塩にかけたつもりでいながら、彼の手などは一つと云へども加つてはいないといふ気のする、得体のしれないものだつた。

    「杉倉まで――」

    房一は目を上げて注意深く道平を見た。

    「いや、そのうち又ゆつくり話さう」

    すると、徳次はびつくりしたやうな眼で房一を見やつた。

    房一は熱心に愛想よく椅子をすゝめた。

    「徳さんが、――今、そこに、おかみさんが来てるんですわ」

    この時さう云ひながら座に入つて来た者があつた。それは今泉だつた。

    「や、さあお上り下さい。さあ――」

    こんな風に「円い」――のだらうか。いや、それはどうでもよかつた。盛子はそこに房一を感じていた。それは房一の醜い他の部分を忘れさすに足るものだつた。

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