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「さあ、知らん」
「ほう、さうか。それはちつとも知らなかつた」
「ねえ。――はやく。――患者ですわ」
そして、これと全く同じ活気が、あの燃え残りの蝋燭の発する佗びしい、だが、ゆらめくやうな活気が今夜の法事で主人役をつとめている神原直造にもあつた。
しかし、さういふ身体の忙しさより何よりこたへたものは、房一にとつては肉親の大病を診察するといふはじめての経験だつた。
六
と、敬遠するとも小莫迦にするとも見える頭の下げ方をして、さつさと行つてしまふのであつた。
「どうでした」
房一はその時逸いち早く、横に寝かされている男の投げ出した手首に血がかすりついているのを、そして寝ながら立てている片足のズボンの膝のあたりにもどす黒い斑点の沁みているのを見てとつた。
「ジョン、降りろ」
が、練吉が駆け登つたのを見ると、先方の男は急に威丈高になつて怒鳴つた。
「さうかの。だが、さう云うても――」